「300字ss-for Twitter-」カテゴリーアーカイブ

『悪夢』

走る、走る、走る。全力で走っても、いつまでも目的地は遠い。
唐突に転んだ。絶望感と同時に、布団の上で覚醒した。

夢、だった。
何に急いでいたのかも思い出せない。
でも。
恐ろしいほどの寝坊だ。準備をして一気に駆け出す。
駆ける、駆ける、駆ける。
ああ、なんて遠い。なんて、とんでもない事態。けれども、僅かな可能性があるのだから全力で急がなくては。夢の中の時以上に勢いよく、駆ける。急ぐ。目的地は…

そして、再び、目を覚ます。
疲労と、混乱と、呆然、困惑の中から、状況と夢と現実を振り分ける。
時計を見れば、時間は早い。急ぐことも思い当たらない。

けれど、今が夢で無いという確証に自信を持っていいのか、戸惑い続ける。

 

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テーマ:夢/2019.10.05.

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『森の歌』

 先を定めぬ逃亡の歩みはいつしか森に迷い込み、一度力尽きたのは巨木の根元だった。
 風の音。
 草のざわめき。
 それさえ、意識するのが難しくなる。

 そして、夢を見た。
 孤独に佇む巨木、やがてそこから注ぐ何かに誘われるように、草が、花が、木の芽が伸びる。
 伸び伸びて、増えて、孤独から解放された巨木から、何故か満足げな意思が伝わってきた。

 目を覚ます。

 深い、深い森の中、巨木にもたれ熟睡していたようだ。思いも寄らないほどに疲労が回復している。
 彼は夢を思い、周囲の森の音を思った。木の葉のすれる音、木々の発する“何か”。そして、巨木から伝わる不思議な意思。

やがて、彼は旅立つ。

森の歌を伝える吟遊詩人の伝説が、そこから始まる。

 

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テーマ:歌/2019.05.04.

咲くはただ、花

 今年も神木の根元にひっそりと、赤い花が咲いた。

 神殿の者は聖女の涙と呼ぶ。
 離れた都の民は魔女の血と呼んでいるらしい。
 先帝が倒れ、皇后は藁にも縋る思いで聖とも魔ともつかぬ花の煎じ薬を求めた。
 そうして母后を救われた当代帝は、かの花を魔女の血と称することを禁じた。

 愚かしい、と村の古老はつぶやく。
 勝手よね、と、村の薬師たちはため息をつく。
 全ては加減次第なのを、使う者たちは知っている。

 都の使者が、致死と生、双方の薬を求めたこと。
 聖女の涙と魔女の血と呼ばれる二種は、同じものであること。
 使い方だと、知識層と薬師たちは皆、知っている。

 魔女は、聖女は、何者か。
 知るべくもない無垢の赤い花は、ただ、時が来れば咲く。

 

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テーマ:花/2019.04.06.

『涙の条件』

 ここで涙を流すことができたら。周囲の目は好転したのに、と気がつくのは翌日くらい。
 そうしていたら、軽いイジメに少しは注目してもらえたかもしれないのに、あの瞬間は、意地でもそんなもの、見せてはいけない気分になっている。やったら負けだ、と。
 別の、普通ならそうでない場面では感情が爆発するように泣いてしまうのに、なんだって僕は、泣いてしかるべき時に涙が出ないんだろう。
  悔しいから、だろうか。そんなの、自分が辛いだけなのに。
  期間が長すぎて、瞬間的にピンと来ないから、だろうか。

 結論がでないまま。
 今でも、僕の涙の条件に損している気がする。

 あの時、涙を流していたら、人生、少し変わっていたのだろうか。

 

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テーマ:涙/2019.03.02.

『誰が為の清浄』

 生きるために薬を盗まねばならぬ子がいる。
 それに目を閉ざせば、毒に抉られる。

 神は何処を見ておいでなのか。第一の眷属のはずの天使にその疑念が浮かぶのは何故なのか。
 それは背徳だ、と思う度、相反する思考が広がる。
 毒だ。この毒がしみこむたび、神から遠ざかる。果てに待つのは堕天、そして、背反勢力に与するみち

 主よ、何故にこのこのように、我らを創られた。
 その葛藤に応えられる者は居ない。
 判るのは、これは誰に仕掛けられたのでもない、それが己の内から生まれた毒だという、絶望的な、そして甘美な事実。

 神は全てを信用していないのか。
 この毒が生まれない者だけを残すと仰せられるのか。

 毒は浸食する。
 治癒薬は、見つからない。

 

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テーマ:薬/2019.02.02.

 

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テーマ:毒/2019.02.02.