先を定めぬ逃亡の歩みはいつしか森に迷い込み、一度力尽きたのは巨木の根元だった。
風の音。
草のざわめき。
それさえ、意識するのが難しくなる。
そして、夢を見た。
孤独に佇む巨木、やがてそこから注ぐ何かに誘われるように、草が、花が、木の芽が伸びる。
伸び伸びて、増えて、孤独から解放された巨木から、何故か満足げな意思が伝わってきた。
目を覚ます。
深い、深い森の中、巨木にもたれ熟睡していたようだ。思いも寄らないほどに疲労が回復している。
彼は夢を思い、周囲の森の音を思った。木の葉のすれる音、木々の発する“何か”。そして、巨木から伝わる不思議な意思。
やがて、彼は旅立つ。
森の歌を伝える吟遊詩人の伝説が、そこから始まる。
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テーマ:歌/2019.05.04.
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