お題小説

300字ss-for Twitter-

『誰が為の清浄』

生きるために薬を盗まねばならぬ子がいる。 それに目を閉ざせば、毒に抉られる。 神は何処を見ておいでなのか。第一の眷属のはずの天使にその疑念が浮かぶのは何故なのか。 それは背徳だ、と思う度、相反する思考が広がる。 毒だ。この毒がしみこむたび、...
300字ss-for Twitter-

『いつもの…』

君はいつも平気そうに笑っている。 僕が、気がついていない、と、思っているんだろう。 僕も、気がついていない、ふりをしている。 いつからか目の端を掠めるようになった、特有の銀色。君の鞄の中からうっかり覗く、錠剤のラベル。 いつからか姿を見かけ...
300字ss-for Twitter-

『晩秋』

麓の村の家々の灯りが眩しい。炭焼き小屋に寝起きする男はただ、眺める。己にそれを求める資格はない、と男は自嘲する。あの灯を、可能性を、多くの家から奪ったからだ。男は、戦場で命の灯を奪い、我が身を養った。それが略奪であることに気がつくのが、遅す...
300字ss-for Twitter-

『霧だった』

僕は何なんだろう。全てがもやもやとしている。 僕の心。僕の体。僕の境界。 僕の色。僕の感覚。僕の夢。 僕、という、存在。誰かが、何かを言っていた。ぼんやりとした僕は、それなりに、精一杯、それに注意を傾ける。何度か、そういうことがあった。何度...
300字ss-for Twitter-

『霧になる』

深い白色が視界を包む。ひんやりとした感触以外、何も判らない。 何かに操られるように、僕は濃霧の内を進む。 声が、聞こえるのだ。こっちへおいで、と。 先日、村の老婆が一人、姿を消したという噂があった。 幼い子がいなくなった、と聞いたのは、もう...