お題小説『あの橋の向こうは…』 きっと、楽園だ。 泥の水を啜るような世界じゃ無い、様々な果実酒の池がある。 湿った小枝で必死に微かな火をくすぶらせる必要なんか無い、尽きることの無い灯火台がある。 土も、もっと肥えているだろう。もしかしたら、パンや果物がなっている木が...2020.07.04お題小説300字ss-for Twitter-
お題小説『金の鍵、銀の鍵、銅の鍵』 金の鍵は王様の。 銀の鍵は姫様の。 銅の鍵は親方の。 さぁ、どれを選ぶ? 銀の鍵をもらった女中の娘。 銀の鍵を、姫様に持って行く。 「無くした衣装箱の鍵よ、ありがとう」 姫様は喜んで、宝石箱からきらきらとした髪飾りを取り...2020.06.06お題小説300字ss-for Twitter-
お題小説『想い出の鞄』 初めて、おじいちゃんの遺した旧いスーツケースを開ける。ちょっとだけ、札束とか売れそうな骨董品とか、現金な物を期待したのは内緒。 入っていたのは、町だった。 真ん中は、おじいちゃんの家。 今は建て替えられている、木造の家の屋根が並ぶ。 ...2020.04.04お題小説300字ss-for Twitter-
お題小説『余り者の王子様』 あの王子様は余り者。 大事な役目も、大きな特技も、綺麗な姿もない。 王子様はお城でひっそりと、ご飯さえも兄弟の余り物を選んで食べて育った。 王様は言う。跡継ぎどころか任せられる領地もない。 大臣は言う。他所の国に似た年の姫様はいない...2020.03.07お題小説300字ss-for Twitter-
お題小説『絹の衣』 「あの衣はどこへ消えた」 王妃が問うは、十四になる姫が産まれた時に贈られた衣。 あのときの王妃は、風邪をめした王女への魔女の呪いを恐れて、処分を命じた。 だから侍女は、あのときに困窮していた妹に産まれた子に、裸よりは、と、あの衣を渡し...2020.02.01お題小説300字ss-for Twitter-