お題小説

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『雲、を』

空は真っ青で、くるくる回る。白い雲が、くるくる廻る。 天に大きな棒を突きだして、ぐいっと動かす。 雲が、ぐいっと曲がって、捻れて、棒の流れと一緒に動く。 えいっ、と、雲のかかった棒を横倒す。 雲は棒の先にひっかかったまま、斜めに立つ。 掴ん...
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『蝉幻想』

どこからか、季節外れ、場所違いの蝉の声が聞こえた。  随分昔から都市化が進み、子供の頃には泣き声で数種の区別が出来た蝉の声は、ここ最近、ほとんど聞かない。喧噪に紛れて聞こえないのかも知れず、蝉自体の種類も数も自分たちにはほとんど聞こえないほ...
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『行商人』

どうか、と、女はいつものように言う。今度の旅こそ、きちんと休む間を惜しまずに、無茶をせず、行って、帰ってきておくれ、と。いつものように、男は応える。さっさと行って帰って、またここで、ゆっくりと休ませてもらうさ、と。幾十度となく繰り返した挨拶...
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『幽霊の石鹸学-序』

テーマ★#ノベルちゃん三題「幽霊、哲学、石鹸」幽霊は石鹸をどうするか?飛ばす? ああ、ポルターガイストの定番だが、ね。石鹸だよ。そして死した自覚の無い人だ。彼らは身体を清めるために石鹸を、否、消えて、幽霊になった石鹸を使う。では、石鹸はいか...
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『蜜』

★テーマ #君・蜜・毒で文を作ると好みがわかる君の涙は毒のように甘くて、蜜のように人に絡みつく そうして浸食された後に待つのは、甘露な地獄か、毒酒を交わし合う楽園か