君は憶えているだろうか、僕たちの村で女医を包んだ、あの炎を。
貴男は覚えているだろうか、あの絵を厄災と言って燃やした魔女を。
君は憶えているだろうか、村を焼いて奪った兵士たちを。
貴男は覚えているだろうか、幾人もの村娘を炎から引き上げて連れ去った兵士たちを。
君の燃えるような炎の色の王妃の衣は、きっといつか、あの女医と同じように炎に包まれるだろう。
貴男の燃えるような才能の伝説は、このままではきっと、あの魔女にまた燃やされるだろう。
あの革命の炎が、様々な物を焼き払い、塗り替える。
交わされた言葉も約束も無い。
記憶すら、春を迎える暖炉の残り火と競うほど。
彼と彼女が邂逅を果たした後、何かが燃えて、尽きた。
テーマ:火・炎/2016.12.03. Twitter300字ss @Tw300ss
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