そろそろ二百年にもなろうか。すでにこの牢獄は、彼女の住まいと化していた。
同じ頃に、同じように捕らわれてきた者たちは皆、拷問の傷で命潰えたり、火刑に処されたりした。
彼女とて初端は同じ。ただ〝本物〟がそこに居た、それが転換期だった。
治癒、幻惑、隠遁。たった三つの呪術を教えられ、習得した。
〝本物〟はやがて、火刑に処された。
「使うも使わぬも、その可否も、先の命運も、結局のところ、誰にも判らぬものだよ」
それが、〝本物〟からの、最後の言葉だった。
唐突に、彼女は解放された。魔女は全て冤罪であった、と。
女は戸惑う。二百年の過去と余生。それは魔女であるという照査ではなかろうか。
〝本物〟は、これを憂いていたのではなかろうか。
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テーマ:救う/2021.11.06.
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